戸田中央メディカルケアグループ 戸田中央メディカルケアグループ
YoriSoi Care導入法人様への特別インタビュー

医療ソーシャルワーカーの業務とITの親和性

戸田中央メディカルケアグループ グループ総病床数 6336床

導入事例のPoint!

  • 今後、ソーシャルワーカーの業務負担が増えることが予想される
  • IT活用を行うことで、人でしかできない業務に力を注ぐことができる
  • YoriSoi Careを利用することで、療養先を探す時間を短縮することができる
  • 秋山さま

    秋山さま(MSW歴20年)

    戸田中央メディカルケアグループ
    一般社団法人 TMG本部 医療福祉部 部長

その人の主体性を大事にしたその人らしい意思決定を支える、ということが私の専門職として大切にしていることです。

秋山さまのご経歴を教えてください。

秋山さま 戸田中央メディカルケアグループに入職し、神経内科の専門病院で12年、その後、埼玉西エリアの急性期病院2か所で8年、トータル約20年のMSWの経験を積んだ後、2019年に本部へ異動となり現職に就きました。
現在は主に、採用と人事、医療福祉部全体のマネジメントをしています。
MSWとしてのキャリアをスタートした病院は少し特殊な病院で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を専門に診ており、長期で入院する方が多いという全国でも珍しい病院でした。

MSWとしては特殊な業務からご経験されたのですね。秋山さまがMSWを志したきっかけを教えてください。

秋山さま 入った高校が進学校で、大学進学に向けて1年生の時からものすごく勉強させられました。でも、将来像が描けないまま目的もなく勉強するということが自分にはできず、あまり勉強が手につかないまま、将来自分が何をしたいのかすごく悩んだ時期がありました。親や学校の先生はなんとなく価値観を押し付けられそうで相談するのが嫌で、でも高校生で考えられる将来のビジョンなんてたかが知れている。
そんな時に、何かを意志決定する際に、ちゃんと自分の話を聞いてくれて、適切なアドバイスをくれて、最後に自分で決められるように後押しをする専門家がどこかにいたらいいな、と思いました。
そして、もしかすると私と同じようにどうしたらいいかわからずに、悩んだり困ったりしている人がいるのではないかと思い、そういう人たちのための相談にのれる専門家に私がなれたらいいのではないか、と考えたのが「援助職」を目指そうと思ったきっかけです。

背景にはご自身のご経験があったのですね。MSWとしてご支援される際に大事にされていることはございますか。

秋山さま MSWとして様々な役割や業務がありますが、私は個人的に「意思決定支援」を一番大切にしたいと考えています。高校生の時に漠然と相談援助職を思い描いたきっかけが、自分の将来の意思決定に迷いがあったということもあり、その人の主体性を大事にしたその人らしい意思決定を支える、ということが私の専門職として大切にしていることです。
正直、神経内科の病院で働いているときは、急性期病院のMSWは「ただ退院を調整しているだけ」にしか見えませんでした。そのため、当時退院支援には関心がなく、やりたい仕事でもありませんでした。実際、急性期病院で転院先のリストだけ渡されたクライアントにお会いしたこともあります。
しかし、実際に急性期病院で働いてみて、病院の機能上の問題や在院日数など様々な制約の中で患者さまやご家族に選択して、決定してもらわなければならない。時に、折り合いがつかずに葛藤する場面もあります。だからこそ、しっかりとお話をお聞きして、その方にあった選択肢を提示でき、最終的にはご自身で意思決定してもらう、そのプロセスがとても大事になってくると思います。そして、受け手の病院も送り手の病院もどちらの機能も経験したからこそ、しっかりと次につないでいきたいと考えています。

秋山さま

限られた時間の中で、適切にクライアントのニーズを理解し、そのニーズに沿った支援を展開するということはとても大事なことではありますが難しさもあります。

あらかじめ決めたものを提示するのではなく、複数選択肢を提示し、最後の意思決定は患者さまやご家族に決めていただく環境をつくるということを意識されているのですね。

秋山さま 何かを選ぶときに、選択肢が多いのはメリットですが、迷うことにもなります。
そのため、転院先を調整するときに、病院のリストだけ提示しても何を基準に選べばいいのかわからないということになります。
その方が選択する際に何を重要視して選ぼうとしているのか、例えば通いやすさなのか、料金なのか、病院の雰囲気なのか…そういうことをしっかりとお聞きして、その方のニーズにあった選択肢をある程度絞って提示できた方が選択はしやすくなることもあります。
ただ病院の情報提供して選ぶだけなら、間に専門職が入る必要はないかもしれません。私たちが支援する目的は、単に転院先を提示するということよりも、その方の置かれている状況をより丁寧にお聞きするプロセスがとても重要と考えます。

そのために面談業務が鍵となってくるのですね。秋山さまが面談時に意識している点・コツはどのようなところでしょうか。

秋山さま まず前提となることとして、答えは相手の中にある、ということですね。
急性期病院で退院支援の数をこなしていると、こういうケースはこういう結果になるだろうな…と経験を積めばある程度結果が予測できるようになります。
特に在院日数に制限のある急性期病院で働いていると、いつまでに結果を出さなければという心理が働いて、気づいたら支援者側が予測した結果に誘導してしまうということも起こりかねません。
しっかりとクライアントのお話を聴いて、納得の上で支援を進めていかないと支援者側の思いだけで進めてしまい、失敗することもあります。限られた時間の中で、適切にクライアントのニーズを理解し、そのニーズに沿った支援を展開するということはとても大事なことではありますが難しさもあります。

システムで解決できることをITで解決し、人でなければできないところに私たち専門職は力を注ぐことができればもっと業務は効率化する。

入退院支援業務に関して、今後予想される問題はどのようなものでしょうか。

秋山さま これからの人口構造を考えると、高齢者が増え、労働人口が減っていきます。そうすると、支援を必要とする方の数は増えていくのに、支援者側が足りなくなっていく、ということが予測されるわけです。
すでに、多くの急性期病院でも利用する患者さまのほとんどが高齢者です。私たちのグループでは、MSWはこの20年で3倍以上になりましたが、現場での業務負担は増え続けています。
それだけ、支援が必要な方の割合が増えているということですね。採用活動も非常に厳しい状況になってきていますので、これまでのように人員を増やして対応するということが難しくなっていくと思います。だからこそ、そこにITの技術が必要になってくると考えています。

どのようなシーンでITを活用すべきだとお考えでしょうか。

秋山さま 例えば、退院支援の中でも有料や老健、回復期/療養病院への転院を調整する業務では、ある程度条件や選択する上での優先順位がわかれば、後は先方とのマッチングだけで成立する場合があります。
特にしっかりとご自身で意思決定ができる方に関しては希望したい条件や現在の病状、飲んでいるお薬などの情報を入力すれば、受け入れ先が検索できるようなシステムが成立さえすれば転院先が決まる、ということは十分にあり得ることだと思います。そういうシステムで解決できることをITで解決し、人でなければできないところに私たち専門職は力を注ぐことができればもっと業務は効率化すると考えます。

人でなければできない業務は、具体的にどのような業務でしょうか。

秋山さま ひとりひとりの気持ちに寄り添うということだと思います。例えば、お看取りの場面の重要な意思決定などは患者さまやご家族それぞれに複雑な思いが絡み合うこともあるので、そのような大事な場面はITでは解決できず、人でしかできない支援といえるのではないでしょうか。
そういった場面にしっかりと時間と人を充てるためにもIT化できるところは積極的に取り入れていく必要があると考えています。

手を放していても受入可能な療養候補先が集まってきますので、「人でしかできない業務」である面談やその他業務に充てることができます。

そのようなお考えからYoriSoi Careにご興味をいただいたのですね。YoriSoi Careにはどのようなご印象をお持ちでしょうか。

秋山さま 最初にお会いしてお話を聞いたときに、YoriSoi Careのサービスの方向性、ワンストップで提供できるシステムにしたいというコンセプトがすごく良いなと感じました。私が従来より考えていた連携室内のIT活用イメージと一致していたので導入を決めました。

患者さまの情報を1件ずつ伝える必要がなくなり、業務効率化につながります。

ありがとうございます。期待いただくのはどのような点でしょうか。

秋山さま まず、現場の業務でメリットと感じるのは時間を短縮できることだと思います。
YoriSoi Careで退院予定の患者さま情報を入力すると、オンライン上で情報を共有することができ、すぐに受入可否を判断いただける。それが時間削減につながり、サービスを利用することのメリットになると思います。私たちの業務はまだまだアナログでいまだに電話とFAXが主な手段です。
お互い忙しいため、先方になかなか電話がつながらないことが時間のロスになりますし、打診先の複数の医療機関にFAXで情報提供をしなければいけないのも手間ですよね。システム利用することで、情報を登録さえすれば手を放していても受入可能な療養候補先が集まってきますので、先ほど申し上げた「人でしかできない業務」である面談やその他業務に充てることができます。
患者さま情報を共有する際に、伝達スピードの速さ、整理された情報が届く質の高さをYoriSoi Careでカバーしてもらえると現場の業務負担は削減されると思います。

YoriSoi Care 導入前 → YoriSoi Care 導入後

秋山さま このようなサービスが普及するにあたって大事なことが2点あると考えていて、ひとつは利用者の使い勝手が良いこと。
もうひとつはプラットフォームサービスなので、より多くの参画があってこそサービスが活きてくると感じています。
私が初めにサービスの方向性としてワンストップで提供できるサービスというコンセプトに共感したのも、このシステムがあれば送り手も受け手もどちらにもメリットがあり、解決できるという目的に沿っているものだと感じたからです。それが実現できると、私たちの業務はとても効率的になると思います。

本日は貴重なお話を頂きありがとうございました。